モーダルシフトとは、トラック輸送中心の物流を鉄道や船舶などに切り替える取り組みです。政府は今後10年程度で鉄道コンテナや内航フェリーの輸送量・分担率を倍増させる目標を掲げています。しかし、モーダルシフトだけでは、トラックドライバーの人手不足や「2024年問題」は解決しません。国の方針を踏まえつつ、トラック側の効率化も同時に進める必要があります。

モーダルシフトとは?簡単にわかりやすく整理

まず、「モーダルシフト とは 簡単 に知りたい」「もーだるしふと とは?」という疑問に答えるために、基本から整理します。

モーダルシフトとは(意味と読み方)

モーダルシフト(Modal Shift)とは、貨物輸送をトラックなどの自動車から、鉄道や船舶など環境負荷の小さい交通手段(モード)に切り替えることです。読み方は「もーだるしふと」です。

特に日本では、幹線部分を鉄道コンテナや内航フェリーに切り替え、前後の集配だけをトラックで行うような形が代表例として語られます。これにより、CO2排出量の削減だけでなく、ドライバー不足への対応、長距離運行の負担軽減などを狙っています。

なぜ今、モーダルシフトが注目されるのか

モーダルシフトが改めて注目されている背景には、以下のような要因があります。

  • トラックドライバーの長時間労働・人手不足(2024年問題)
  • CO2削減など環境規制への対応
  • 燃料高騰による輸送コストの圧力
  • 高速道路の渋滞・事故リスクの軽減ニーズ

特に人手不足について、国土交通省の「物流の2024年問題について」によると、何も対策を講じない場合、2024年度に約14%(4億トン相当)、2030年度には約34%の輸送力不足が生じる可能性が示されています。モーダルシフトは、この輸送力不足を補う手段のひとつとして期待されているのです。

国のモーダルシフト倍増目標と2024年問題

続いて、モーダルシフトに関する国の目標と、トラック業界が直面する2024年問題との関係を整理します。

政府の倍増目標:今後10年で鉄道・船舶を倍増

2023年6月に公表された「物流革新に向けた政策パッケージ」では、次のような方針が示されています。

  • 政策の3本柱:①商慣行の見直し ②物流の効率化 ③荷主・消費者の行動変容
  • モーダルシフトについては、今後10年程度で鉄道(コンテナ貨物)・内航フェリー等の輸送量・輸送分担率を倍増させることを目指す

これは、トラック輸送に過度に依存している現状を改める大きな方向性であり、幹線輸送を鉄道・船舶に移し、トラックは集配や中継輸送などの役割を担う姿が想定されています。

総合物流施策大綱と輸送力不足34%の内訳

総合物流施策大綱(2026〜2030年度)では、先ほどの輸送力不足の見通しに対して次のような考え方が示されています。

  • 2030年度に想定される約34%の輸送力不足のうち、約14%は官民の取り組みにより概ね克服する見込み
  • 残る不足分(約20%前後)への対応が今後の課題

モーダルシフトは、この「官民の取組」の重要な要素ですが、それだけで全てが解決するわけではないことがわかります。トラック輸送の効率化や、配送ニーズそのものを減らす取り組み(再配達削減・共同配送など)も同時に必要です。

2024年問題と関連制度のスケジュール

トラックドライバーの労働時間を制限する「2024年問題」は、モーダルシフトと密接に関係しています。主な制度変更の流れを整理すると、次の通りです。

時期 主な制度・動き
2024年4月〜 トラックドライバーの時間外労働上限960時間規制・改正改善基準告示の適用開始(いわゆる2024年問題)
2025年4月〜 30分以上の荷待ち・荷役時間の記録義務が拡大、1年間の保存が必要
2026年4月1日〜 改正物流効率化法が全面施行。年間取扱貨物重量9万トン以上の特定荷主等に中長期計画作成・定期報告・物流統括管理者(CLO)選任義務。荷待ち・荷役等は原則2時間以内(努力目標1時間以内)と明示

また、長時間の荷待ちを強いる荷主・元請に対し、2023年7月に「トラックGメン」が創設され、2024年11月には「トラック・物流Gメン」に改組されました。これにより、働きかけ→要請→勧告・公表という段階的な是正措置が取られる体制となっています。

モーダルシフトは、こうした一連の制度改革と並行して進められる施策の一つであり、トラック輸送の効率化とセットで捉えることが重要です。

モーダルシフトだけでは足りない理由:現場目線で見る課題

次に、モーダルシフトを進めれば全てが解決するわけではない、という点を現場の実情から整理します。

モーダルシフトで変わるのは「幹線」だけ

モーダルシフトが対象とするのは、主に拠点間の幹線輸送です。たとえば、

  • 関東の物流センターから関西の物流センターまでの長距離移動を鉄道コンテナに切り替える
  • 九州〜関東間の輸送をトラック直行ではなく内航フェリー+トラックにする

といったイメージです。しかし、最寄り駅・港から荷主倉庫までの前後行程、いわゆることになります。ここでの荷待ちや積み下ろしの非効率が解消されなければ、ドライバーの拘束時間は大きくは減りません。

1運行あたり拘束時間の3時間が「荷待ち・荷役」

現場の時間の使われ方をデータで見ると、課題はよりはっきりします。国土交通省の「トラック輸送状況の実態調査」によると、2020年度のドライバー1運行平均拘束時間のうち、荷待ち・荷役作業等は計約3時間に達しています。

さらに同調査では、

  • トラック1運行あたりの荷待ち時間は平均1時間34分
  • 荷待ちが発生する運行では、拘束時間が荷待ちなしの運行に比べて約2時間長い

という結果も示されています。これは、守衛室での受付待ち、バースの空き待ち、フォークリフトの手配待ちなど、現場で日常的に起きている状況をそのまま数字にしたような結果です。

モーダルシフトで幹線部分が鉄道や船になっても、倉庫での受付・荷役が従来通りであれば、「待ち時間3時間」はそのまま残りかねません。

荷主勧告制度・トラックGメンで「荷待ち」は放置できない時代に

長時間の荷待ちを放置すると、単にドライバーの不満が高まるだけでなく、法的なリスクも増しています。

  • 貨物自動車運送事業法の荷主勧告制度では、荷待ち時間の恒常的な発生を荷主側が改善しない場合、勧告・社名公表の対象となり得ます。
  • トラック・物流Gメンは、長時間の荷待ちを強いる荷主・元請に対し、働きかけ→要請→勧告・公表まで行う役割を担っています。

モーダルシフトの検討とあわせて、荷待ち・荷役時間の短縮、受付〜バースまでのオペレーション改善を進めなければ、「モーダルシフトは進んだが、現場は忙しいまま」というアンバランスな状態になりかねません。

モーダルシフト時代に求められるトラック側の効率化5ポイント

それでは、モーダルシフトを進めつつ、トラック側でどのような効率化を図るべきでしょうか。現場の実務に即して、5つのポイントに整理します。

1. 荷待ち・荷役時間の「見える化」と削減

総合物流施策大綱(2026〜2030年度)では、ドライバーの労働環境改善として1運行平均拘束時間のうち荷待ち・荷役作業等の計約3時間を、1時間以上短縮するという政府目標が掲げられています。ここで重要になるのが「見える化」です。

  • いつ・どの倉庫で・どれくらい荷待ちが発生しているかを記録する
  • 30分以上の荷待ち・荷役については、2025年4月から義務化される記録を活用して分析する
  • バース別・時間帯別の混雑を把握し、予約時間帯の見直しや人員配置に活かす

フォークリフトがフル稼働している時間帯に到着が集中していないか、守衛室での受付がボトルネックになっていないか、といった現場の実感をデータで裏付けし、荷主・運送会社・倉庫オペレーターで共有することが、モーダルシフトの前提となる「効率的なトラック運行」の第一歩です。

2. 受付・バース割当のデジタル化

モーダルシフトで幹線が鉄道・船舶になっても、倉庫の守衛室で紙台帳に手書きしているような受付では、トラック側の効率化は進みません。具体的には、次のようなデジタル化が有効です。

  • ドライバー到着時の受付を、タブレットやスマートフォンの画面で行う
  • バースの空き状況をリアルタイムで共有し、自動または半自動で割り当てる
  • 入庫順や優先度をシステム上で管理し、現場担当者間で共通認識を持つ

たとえば、守衛室でドライバーが受付票を記入し、担当者が倉庫内に内線電話をかけてバース状況を確認……という流れは、1人あたり数分の手間でも、1日数十台〜数百台が出入りする倉庫では大きなロスになります。受付とバース割当がデジタル化されれば、トラックの回転率はモーダルシフトと相乗効果で向上しやすくなります。

3. トラック呼出とドライバーへの連絡手段の整備

現場でよくあるのが、以下のような「呼出」の非効率です。

  • ドライバーに「少しお待ちください」と伝えたまま、呼び忘れてしまう
  • 構内での待機場所が分かりづらく、呼び出してもなかなか来ない
  • 海外出身ドライバーに指示が伝わらず、バースまでの誘導に時間がかかる

このような状況を防ぐには、

  • 待機場所を明確に示し、呼出時にはSMSやLINEなどでワンタップ通知する
  • 受付時に車両番号・積み荷・バース予定などを紐づけておき、呼出時の取り違えを防ぐ
  • 構内の地図やバース番号を含む案内を、ドライバーのスマホ画面で表示できるようにする

といった仕組みが役立ちます。呼出一つを見ても、アナログな運用とデジタルな運用では、1台あたり数分〜十数分の差が出ることも珍しくありません。幹線部分をモーダルシフトで最適化するなら、その前後の呼出・誘導も合わせて効率化しておきたいところです。

4. 共同配送・フィジカルインターネット構想との連動

モーダルシフトと並んで重要視されているのが、「共同化・シェアリング」です。経済産業省・国土交通省が2022年に策定した「フィジカルインターネット・ロードマップ」では、2040年を目標とする次世代共同物流構想が示されています。

ここで目指されているのは、

  • トレーラーやコンテナ、物流拠点を荷主・物流会社の枠を超えて共有する
  • トラックや鉄道、船舶などを「つながる物流ネットワーク」として捉え直す
  • データに基づき最適な輸送モードとルートを自動選択する

といった世界観です。実現には時間がかかりますが、共配センターの活用や、他社との共同配送など、現場レベルでも一歩ずつ準備を進めることが求められます。モーダルシフトを検討する際には、「幹線を鉄道・船に変える」だけでなく、「その前後も他社と共同化できないか」という視点が重要です。

5. 外国人ドライバーとの多言語コミュニケーション

トラックドライバーの人手不足に対応するため、2024年3月には特定技能「自動車運送業」分野が追加され、外国人トラックドライバーの受入れが制度化されました。2026年3月の技能試験には408人が受験するなど、受け入れは本格化しつつあります。

一方で、物流・旅客企業230社調査(2025年)では、50.9%が外国人材との日本語コミュニケーションに不安があると回答しており、現場の戸惑いも少なくありません。

モーダルシフトで幹線輸送を効率化しても、倉庫のバースで外国人ドライバーとの意思疎通がとれず、誘導や荷役指示で時間がかかっていては本末転倒です。具体的には、

  • 構内図・バース案内・安全指示を多言語化した掲示物やマニュアルを用意する
  • 「待機場所」「エンジン停止」「ヘルメット着用」など、頻出指示はピクトグラムと併用する
  • 受付〜呼出のプロセスを、スマートフォンやタブレット画面で多言語表示できるようにする

といった取り組みが、トラック側の効率化に直結します。今後モーダルシフトが進み、幹線部分を鉄道・船で移動する外国人ドライバーも増えていけば、荷主・倉庫側の多言語対応の有無が、輸送効率を左右する要素にもなっていくでしょう。

モーダルシフトとトラック効率化を両立させる現場改善のヒント

最後に、モーダルシフトとトラック側の効率化を両立させるために、倉庫現場で取り組みやすい改善の方向性をまとめます。

守衛室からバースまでの「導線」を見直す

モーダルシフトの検討に入ると、つい鉄道やフェリーのダイヤやターミナル配置に関心が向きがちですが、倉庫現場でまず見直したいのは「守衛室→待機場所→バース→退場」までの導線です。

  • 守衛室で受付票を書かせていないか(記入内容を事前登録・QR受付に置き換えられないか)
  • 待機場所の案内が口頭だけになっていないか(地図や写真を使って明示できないか)
  • バースへの誘導が、担当者の経験や勘に頼りすぎていないか(ルールやシステムで標準化できないか)

例えば、入庫トラックの多い午前中は、守衛室に1名増員するだけで受付待ちが10分短縮できる現場もあります。さらに、受付と同時にバース候補をシステムで仮確保し、荷役担当者がフォークリフトで向かうタイミングに合わせて呼び出すようにすれば、フォークリフトの無駄な移動も減らせます。

呼出特化型システムの活用と多言語対応

こうした導線改善をデジタルで支える手段として、トラック呼出に特化したシステムの活用も選択肢になります。例えば、呼び出し特化型のシステム(例: ヨビトラなど)では、QRコードによるセルフ受付や、LINE・SMSを使ったワンタップ呼出、荷待ち時間の自動記録とCSV出力といった機能が提供されています。月額4,980円(ライトプラン・税別)から導入できるSaaSもあり、中小規模の倉庫でも比較的取り入れやすい価格帯です。また、ドライバー向け画面や呼出通知が日・英・中・越・葡(ブラジル)・尼(インドネシア)の6言語に対応しているため、特定技能外国人ドライバーが増える現場でも、母国語で受付〜呼出を完結させることができます。モーダルシフトで幹線輸送を組み替えるタイミングに合わせて、こうしたトラック周りのオペレーションも同時に見直すと、総合的な効果が出やすくなります。

CLO(物流統括管理者)と現場リーダーの役割

2026年4月以降、年間取扱貨物重量9万トン以上の特定荷主・特定連鎖化事業者には、物流統括管理者(CLO)の選任が義務化されます。CLOには、モーダルシフトの検討だけでなく、

  • 荷待ち・荷役時間の管理と短縮
  • トラック・鉄道・船舶を含めた輸送モードの最適化
  • 多言語対応や安全教育など、ドライバーとのコミュニケーションの仕組みづくり

といった幅広い役割が期待されます。CLOが机上の計画だけでなく、フォークリフト担当者や点呼係、守衛室スタッフなど現場リーダーと定期的に対話し、「どこでどれくらい待ちが発生しているか」「どこから改善すると効果が大きいか」を一緒に洗い出すことが重要です。

モーダルシフトは「幹線を切り替えるプロジェクト」と見られがちですが、実際には、トラックの乗務員と倉庫現場の業務設計を含めた「全体最適」の取り組みです。現場からのボトムアップと、CLOを中心としたトップダウンをうまく組み合わせることで、モーダルシフトの効果を実感しやすくなります。

荷主・運送・倉庫・消費者がそれぞれ変わる必要性

最後に、物流革新に向けた政策パッケージで示された「荷主・消費者の行動変容」という観点にも触れておきます。モーダルシフトやトラック効率化を進めるためには、

  • 荷主:荷待ち時間を発生させない出荷体制、リードタイムに余裕を持った発注
  • 運送会社:積載率向上や共同配送への積極参加、デジタルツールの活用
  • 倉庫:バース予約や呼出システムの導入、多言語対応と安全管理の強化
  • 消費者:再配達を減らす受け取り方(宅配ボックス利用など)

といった、各プレーヤーの行動変容が不可欠です。実際、宅配の再配達率は2024年10月調査で10.2%となっており、政府は6%への半減を目標としています。モーダルシフトだけでなく、こうした身近な行動も含めた「物流全体の変革」が、2030年以降の日本の物流を支えていくことになります。

モーダルシフトとは何かを正しく理解したうえで、トラック側の効率化や現場改善にどうつなげるか。2024年問題を乗り越え、持続可能な物流を実現するために、今まさに問われている視点です。