2026年4月に全面施行された改正物流効率化法により、特定荷主には国への定期報告(様式第5)が義務付けられ、報告書には荷待ち時間・荷役等時間の実測値を記載する必要があります。ところが現場でよくある誤解が、「荷待ち時間=トラックが着いてから呼ばれるまでの時間」だと思い込んでいることです。

国土交通省等の「物流効率化法に関するQ&A(令和8年3月版)」は、荷待ち時間の計算方法をかなり細かく定めています。このルールを知らずに「到着からの待ち時間」をそのまま集計すると、実態より長い(=自社に不利な)数字を国や荷主に出してしまうことになりかねません。本記事では、Q&Aが定める計算ルールを現場で使える10ルールに整理して解説します。

大前提:荷待ち時間の起算点は「到着」ではなく「合意された指示時刻」

Q&Aの根幹はこれです。荷主や倉庫側が集荷・配達の時刻(または時間帯)を指示し、トラック事業者と合意されている場合、荷待ち時間はその指示時刻から数え始めます。トラックがどれだけ早く着いていても、指示時刻前の待機は荷待ち時間ではありません。

この「合意された指示時刻」の証跡として最も分かりやすいのがバース予約の予約枠です。Q&Aは「トラック予約システム等がなければ指示にならないのか」という問いに「限定しない」と答えていますが、裏を返せば、予約システムの予約枠は合意された指示時刻の明確な記録になるということです。

Q&A準拠の10ルール

ルール1:指示なしの場合は「到着」から起算

時刻の指示がない(フリー入場の)場合は、到着時刻から荷役等の開始までが荷待ち時間です。到着後速やかに受付する運用であれば、受付時刻からの起算で構いません。

ルール2:受付時間帯の指示あり+開門前到着 → 開門時刻から起算

「受付は8時から」と案内している施設に7時に到着した場合、荷待ち時間は8時(受付開始時刻)から数えます。開門前の1時間は含みません。

ルール3:指示時刻より早着 → 指示時刻から起算(早着分は切り捨て)

10時の予約枠に9時30分に到着した場合、9時30分〜10時の30分間は荷待ち時間に含めません。10時から荷役開始までが荷待ち時間です。ここを到着起算で集計すると毎回30分ずつ過大計上になります。

ルール4:早着して指示時刻前に荷役完了 → 荷待ち時間はゼロ

9時30分に早着し、たまたまバースが空いていて9時50分に荷役が終わった場合、荷待ち時間は0分です。マイナスにはなりません。

ルール5:ドライバー都合の遅刻で順番が後ろ倒しになった待機は除外

予約時刻に遅れて到着し、順番を後ろに回されて生じた待機は、荷主等都合の荷待ちではないため除外できます。

ルール6:業務指示によるドライバーの休憩時間は除外

運行管理上の指示でドライバーが昼食休憩を取っている時間は、荷待ち時間から除きます。

ルール7:施設側の休憩時間中の待機は「含む」

見落としがちなポイントです。倉庫側の昼休みでトラックを待たせた時間は、荷主等都合の待機として荷待ち時間に含まれます。ただし「休憩時間帯を避けて来てください」と事前に指示していたのにドライバー都合で休憩中に到着した場合は、休憩終了時刻からの起算が認められます。

ルール8:施設「周辺」での待機も含む

構内に入れず近隣の路上や待機場で待たせた時間も、法30条4号の「周辺の場所」での待機として荷待ち時間に含まれます。「場内に入れていないからノーカウント」にはなりません。

ルール9:形だけの指示時刻は「実質的に指示なし」とみなされるリスク

指示時刻を設定していても、毎回2時間以上待たせて改善しない場合、その指示は実質的に機能していないとみなされ、到着時刻からの起算に変わるリスクがあります。予約枠を設定するなら、枠どおりに呼び出せる運用の裏付けが必要です。

ルール10:天候・交通事情による荷待ちは除外可

大雪や事故渋滞など、荷主等の責めに帰さない事情で生じた待機は除外できます。

荷役等時間と計測単位の注意点

  • 荷役等時間は、荷役・検品・荷造り・入出庫・仕分け・ラベル貼りなどの開始から終了まで。ドライバーが立ち会いで離れられない時間も含みます。一方、養生やシート掛けなど運送側の作業は原則含みません(荷主の指示によるものは含む)。
  • 計測単位は1運行ごとではなく「1回の受渡し」ごとです。同一事業所内に複数施設がある場合は原則施設ごとに計測します。
  • 荷卸しと荷積みの両方を行う場合は、別々に計測することも認められています。

手書き・目分量の記録では、なぜ対応できないのか

10ルールを見て分かるとおり、正しい荷待ち時間の計算には「予約(指示)時刻」「到着時刻」「呼出(荷役開始)時刻」の3点セットが受渡しごとに必要です。ホワイトボードや手書きの受付簿では、そもそも早着切り捨ての計算ができず、到着起算の過大な数字を報告してしまいます。

逆に、予約と受付・呼出が同じシステムで記録されていれば、この計算は全件・自動で行えます。ヨビトラの「荷主提出用 実績報告書」は、Q&A(令和8年3月版)のルールに準拠して指示時刻起算・早着分の自動切り捨てを適用した荷待ち時間を月次で自動集計し、計算根拠つきのPDF・CSVで出力します。荷主側の定期報告(様式第5)の基礎資料にそのまま使えます。

まとめ

  • 荷待ち時間の起算点は原則「合意された指示時刻」。到着からの単純な引き算ではない
  • 早着分は切り捨て、指示時刻前に荷役が終われば荷待ちゼロ
  • 施設側の休憩中・施設周辺での待機は含む。ドライバー都合の遅刻・休憩、天候・交通事情は除外
  • 正しい計算には予約時刻・到着時刻・呼出時刻の3点記録が必須。予約枠は「合意された指示時刻」の最良の証跡になる

※本記事は公表資料に基づく一般的な解説であり、個別事案の法的判断は所管省庁・専門家にご確認ください。