宅配の再配達率は2024年10月時点で10.2%。政府はこれを6%程度まで半減させる目標を掲げています。しかし、再配達削減を「宅配クルーと消費者の努力」だけに押しつけていては、物流全体の生産性は上がりません。

国土交通省の資料では、何も対策を取らなければ2024年度に約14%、2030年度には約34%の輸送力不足が生じる可能性が示されています(国土交通省「物流の2024年問題について」)。再配達問題の根っこには、BtoB側(幹線輸送・物流拠点)の非効率が横たわっています。

この記事では、「再配達 削減」をキーワードに、幹線・拠点側で何をすべきかを整理し、荷待ち時間削減や倉庫のトラック受付の改善策まで、現場目線で解説します。

再配達削減は「宅配」だけの問題ではない

再配達率10.2%という数字を、現場の肌感覚に落とし込むとどう見えるでしょうか。首都圏・関西圏などの大消費地では、朝のセンター仕分けから夕方の再配便まで、ドライバーはギリギリの人員で回しています。その中で1割強が再配達になれば、1便あたりの積載効率も、ドライバー1人あたりの生産性も確実に低下します。

一方で、地方の生産地・港湾部の拠点では、宅配向けの仕分けに加え、センター間幹線やBtoBの納品も同じ人員・同じバースを使って回しているケースが多く見られます。このとき、

  • 幹線便が荷待ちで遅延 → 宅配の積み込みが遅れる
  • 倉庫でのバース渋滞 → 宅配センターへの着車が遅れ、朝仕分けに間に合わない

といった「上流の遅れ」が、下流の宅配・再配達率に連鎖します。つまり、再配達削減を考えるとき、宅配ネットワークだけを見ても限界があり、BtoB側の効率化なしに根本解決は難しいのです。

国交省データから見る「再配達と輸送力不足」の構造

まずは、国土交通省や政府の公式データから、再配達問題がどのように全体の輸送力不足と結びついているかを整理します。

2024年問題と輸送力不足:再配達は「ムダな走行」の象徴

国土交通省の「物流の2024年問題について」によると、対策を講じない場合、2024年度に約14%(4億トン相当)、2030年度には約34%の輸送力不足が生じる可能性が示されています。この「輸送力不足」は、

  • ドライバーの時間外労働の上限規制(年間960時間)
  • 高齢化によるドライバー数の減少
  • 荷待ち・荷役などの非効率作業の多さ

といった要因から生まれるものです。ここに再配達を当てはめると、1回で済むはずの配達が2回必要になることで、限られた輸送力を「ムダな走行」に食われていると言えます。

再配達率10.2%を単純に「運行の1割以上が余分に走っている」と読み替えれば、そのコストと人員を他の必要な輸送に回せない状況が浮かび上がります。

荷待ち時間と再配達率の関係:上流の詰まりが下流に波及

国土交通省の「トラック輸送状況の実態調査」によると、トラック1運行あたりの荷待ち時間は平均1時間34分で、荷待ちが発生する運行では拘束時間が約2時間長いという結果です。また、2020年度のデータでは、ドライバーの1運行平均拘束時間のうち、荷待ち・荷役作業等が計約3時間を占めており、政府はこれを1時間以上短縮することを目標としています。

幹線便・拠点便でこのような荷待ちが常態化していると、

  • 宅配センターへの着車が遅れ、当日配達枠が圧縮される
  • 午後・夜間の配達時間帯が狭まり、不在率が高い時間帯に集中せざるを得ない
  • ドライバーの勤務時間制限により、再配便を翌日に回さざるを得ない

といった形で、再配達率の上昇要因となります。逆に言えば、BtoB側で荷待ち・荷役時間を削減できれば、宅配側が「配りやすい時間帯」に十分な便数を確保しやすくなる、という構造です。

政策パッケージの3本柱と再配達削減

政府が2023年6月にまとめた「物流革新に向けた政策パッケージ」では、

  • ①商慣行の見直し
  • ②物流の効率化
  • ③荷主・消費者の行動変容

という3本柱が示されています。③では再配達削減PR月間や宅配ボックス設置促進など、消費者向けの取り組みが進み、前述のように宅配再配達率は10.2%まで下がってきました。

しかし、輸送力不足を補うには、①と②、つまり荷主・物流拠点側の商慣行とオペレーションの見直しが欠かせません。幹線・拠点側が動かなければ、再配達率6%という目標も、単に「現場に無理をさせる」だけになりかねないからです。

再配達削減のためのBtoB側アプローチ:6つの視点

ここからは、再配達削減を自社のBtoB物流改善にどう落とし込むか、6つの視点で整理します。首都圏・地方、製造業・流通業にかかわらず、多くの倉庫・物流センターで共通するポイントです。

1. 荷待ち時間を「見える化」し、ボトルネックを特定する

再配達削減の議論は、つい「ラストワンマイル」に寄りがちですが、最初に着手すべきは幹線・拠点での荷待ち時間の実態把握です。2025年4月からは、30分以上の荷待ち・荷役等の記録・1年保存義務の対象が拡大します。さらに、2026年には改正物流効率化法が順次施行され、荷待ち+荷役の合計2時間以内(努力目標1時間以内)という判断基準が明示されます。

まずは次のような項目を、紙でもCSVでもよいので記録に残すことが重要です。

  • 到着時刻・受付完了時刻・バース着車時刻・作業完了時刻
  • 荷待ちの発生要因(バース不足、スタッフ不足、予約超過など)
  • 時間帯別・曜日別の混雑状況

ここを押さえずに再配達削減を語っても、「どこを改善すれば効果があるのか」判断できません。現場では、守衛室での受付台帳、事務所のホワイトボード、フォークリフトの無線連絡など、バラバラの情報が存在しがちです。まずは、これを1つのフォーマットで集約する仕組みが必要です。

2. バース運用の見直し:宅配・路線・幹線の混在を整理

多くの倉庫・センターでは、

  • 宅配向けの路線便
  • 幹線の大型車・中継輸送
  • BtoB納品の4t・大型

が同じバース群を「先着順」で使っているケースが見られます。この場合、宅配側の遅れが再配達率に直結するのに対し、幹線側は荷姿・ロットが大きく、荷待ち時間も長くなりがちです。

再配達削減の観点では、次のような工夫が有効です。

  • 宅配・路線便専用のバース枠をピーク時間帯だけでも確保する
  • 幹線の積み下ろし時間を、宅配センターの仕分け時間を避けて配車する
  • 繁忙日(週初・週末など)に、時間帯別のバース予約を導入する

こうしたバース運用の改善は、宅配の当日配達枠を守ることにつながり、結果として不在再配達の抑制に寄与します。

3. 幹線・拠点での「時間指定」の考え方を見直す

BtoB取引では、「午前必着」「15時までに納品」といった時間指定が慣行として残っている現場も多くあります。しかし、2024年問題によってドライバーの時間外労働が厳格に管理される中、過度な時間指定は輸送力を圧迫し、ひいては宅配側の配達時間帯の自由度を奪う要因になります。

再配達削減の文脈で考えるなら、

  • 納品先の操業に支障が出ない範囲で、時間指定を「午前→午前中」「15時まで→当日中」などに緩和
  • 倉庫・センター側で受け入れ可能な時間帯を広げる取り組み(早朝受入・夜間受入など)
  • 「宅配ピーク時間帯とぶつからない」幹線便スケジュールの調整

といった工夫が考えられます。これにより、ドライバーの拘束時間を平準化し、宅配側が「在宅率の高い時間帯」に配達を集中しやすくなります。

4. 荷主・倉庫の「ホワイト物流」行動宣言を実効性あるものにする

「ホワイト物流」推進運動では、荷主企業等が荷待ち時間の短縮、パレット活用などの自主行動宣言を提出しています。再配達削減の観点からは、宣言を形式的なものに終わらせず、次のような点を盛り込むことが重要です。

  • 荷待ち時間・荷役時間の目標値と、実績モニタリングの仕組み
  • 宅配・路線便の時間帯優先や専用バース設置など、再配達削減に直結する配慮
  • 再配達率の推移を物流KPIの1つとして共有し、幹線・拠点側も責任を持つ体制

また、2026年4月1日から全面施行される改正物流効率化法では、年間取扱貨物重量9万トン以上の「特定荷主・特定連鎖化事業者」に、中長期計画の作成・定期報告・物流統括管理者(CLO)の選任が義務付けられます。CLOは社内の物流改革を統括する立場として、再配達率と荷待ち時間の両方を追いかけるKPI設定が求められるでしょう。

5. 多言語コミュニケーションの整備:外国人ドライバー時代の前提条件

再配達削減と聞くと、多言語対応は一見関係がないように思えるかもしれません。しかし、輸送力不足を補う上で外国人ドライバーの活用が進んでいる現状を踏まえると、無視できないテーマです。

2024年3月には、特定技能に「自動車運送業」分野が追加され、2026年3月の技能試験には408人が受験するなど、外国人トラックドライバーの受け入れが本格化しています。また、物流・旅客企業230社を対象とした2025年の調査では、50.9%が外国人材との日本語コミュニケーションに不安を感じていると回答しています。

荷積み・荷下ろしの現場で、

  • バース番号や進入ルートが伝わらず、構内で迷ってしまう
  • 守衛室・受付でのやりとりに時間がかかり、列が伸びる
  • フォークリフト作業者との連絡がうまくいかず、作業開始が遅れる

といった状況が増えれば、結果として荷待ち時間が延び、幹線遅延→宅配遅延→再配達増という連鎖が起こり得ます。外国人が日本で働く以上、日本語の習得は重要ですが、現場特有の言い回しや専門用語を、母国語と日本語の両方で繰り返し提示する仕組みがなければ、学習も進みません。

この意味で、多言語の案内標識やピクトグラム、多言語音声アナウンス、翻訳チャットなどは、単なる「便利ツール」ではなく、輸送力不足を補うための基盤整備と位置づけるべきです。

6. 倉庫のトラック受付デジタル化:再配達削減に効く実務改善

最後に、倉庫・物流センターのトラック受付のデジタル化について触れます。現場を歩くと、今もなお、

  • 守衛室で紙の受付票に記入
  • 番号札やビー玉のトレーで順番管理
  • 呼び出しは場内放送や手書きのホワイトボード

といった運用が残っている現場は少なくありません。このスタイルでは、

  • ドライバーが受付からバースまでの間で長時間待機しがち
  • 呼び出し漏れ・聞き逃しで余計な荷待ちが発生
  • 荷待ち時間の実績が紙ベースで、分析に活かせない

といった問題が起こります。これを、

  • QRコードでセルフ受付
  • バースへの呼び出しはLINE・SMSなどでワンタップ通知
  • 荷待ち時間を自動計測してCSV出力

といった仕組みに変えると、荷待ち時間の短縮だけでなく、荷主としての説明責任やCLOのレポート作成にも役立つデータが蓄積されます。こうした呼び出し特化型のシステム(例: ヨビトラなど)は、月額4,980円(ライトプラン・税別)から導入できるものもあり、再配達削減を含む「輸送力のムダ削減」の一手として、中小規模の倉庫でも現実的な選択肢になりつつあります。

再配達削減に向けた具体的なBtoB改善施策

ここからは、現場で実行しやすい具体策に落とし込んでいきます。幹線輸送・拠点運営に携わる読者を想定し、フォークリフトやバースの運用レベルまで踏み込んで整理します。

施策1:荷待ち時間データをCSVで一元管理する

まず実施すべきは、荷待ち・荷役時間の定量的な把握です。2025年4月以降は記録義務が広がるため、「やらざるを得ない」タスクでもありますが、再配達削減の観点では次のような工夫が有効です。

  • 受付からバース着車までの時間を自動で計測できる仕組みを採用
  • ドライバー・車番・便種別(宅配・路線・幹線・BtoB納品)を紐づけて記録
  • CSV形式で出力し、曜日別・時間帯別の分析を定例化

紙台帳やExcelの手入力でもスタートはできますが、誤入力や記入漏れが発生すると信頼性が落ちます。受付システムと連動させて、受付時刻・呼び出し時刻・バース着車時刻を自動記録できると、CLOや管理者は分析に専念できます。

施策2:宅配関連便の「優先スロット」を設ける

再配達削減に直接効かせるには、宅配センターへの入出庫便を、倉庫側で優先的に処理する仕組みづくりが重要です。具体的には、

  • 朝の仕分けに間に合わせるための早朝〜午前前半のバース枠を、宅配・路線便専用とする
  • 夕方便・夜間便に対しても、「配達時間帯を広げるための便」と位置づけ、優先ルールを設定
  • 幹線・BtoB納品便には、事前予約制でピーク時間帯を避けた配車を要請

これを現場で徹底するには、守衛室・事務所・フォークリフト担当まで情報を共有し、優先スロットのルールを明文化することが欠かせません。場内放送だけでの運用では徹底しきれないため、バース割当や呼び出しをデジタル化し、優先度の高い便には画面上で分かりやすくマークを付けるなどの工夫も有効です。

施策3:多言語対応で構内迷子と指示ミスを減らす

外国人ドライバーが増える中で、構内での迷子やコミュニケーションミスが荷待ち時間の一因となっている現場も見受けられます。再配達削減というゴールからは一見遠いようでも、輸送力の有効活用という観点では無視できません。

具体例としては、

  • 受付タブレットやドライバー画面を、日本語に加え英語・中国語・ベトナム語・ポルトガル語(ブラジル)・インドネシア語などで表示
  • バース番号・進入ルート・構内ルールを、多言語の文字とピクトグラムで案内
  • 事務所から現場への一斉指示を、多言語で配信できる体制

を整えることで、初回来場のドライバーでも迷いにくくなります。また、「母国語で聞き、日本語の原文もあわせて見る・読む」体験を日常的に提供できれば、外国人材にとっては実務内で日本語を学ぶ機会となり、中長期的には日本語コミュニケーションの負荷も下がっていきます。

施策4:呼び出しオペレーションの標準化とシステム化

バース呼び出しのバラつきは、そのまま荷待ち時間のバラつきにつながります。守衛室・事務所・現場(バース・フォークリフト)のあいだで、次のような標準化を図ると、幹線・宅配いずれの便にも好影響が出ます。

  • 受付→バース割当→呼び出し→作業完了までのフローを1枚のチャートにまとめる
  • 呼び出し手段を、場内放送だけに頼らずLINE・SMS・専用アプリ等に統一
  • 待機場所・トイレ・休憩所の場所も、多言語で案内しドライバーの動線を固定

呼び出し特化型のシステム(例: ヨビトラなど)では、QR受付やワンタップ呼出、荷待ち時間の自動記録とCSV出力といった機能によって、こうしたオペレーションの標準化を支援することができます。月額4,980円(ライトプラン・税別)からの価格帯であれば、まずは1拠点で試行導入し、効果を見てから全拠点展開する、というステップも取りやすいでしょう。

施策5:CLOを中心としたPDCAサイクルの構築

2026年4月以降、特定荷主・特定連鎖化事業者にはCLO(物流統括管理者)の選任が義務付けられます。CLOの役割は単なる「報告書の取りまとめ」ではなく、

  • 荷待ち・荷役時間データに基づくボトルネックの特定
  • 幹線・宅配・BtoB納品をまたぐ配車・バース運用の最適化
  • 再配達率や輸送コスト、人手不足リスクを束ねた全社KPIの設計

など、物流全体の生産性向上にコミットする立場です。CLO主導で、

  • 月次での荷待ち時間・再配達関連指標のレビュー
  • 倉庫・センター単位の改善施策の共有(成功事例・失敗事例)
  • 荷主内の各事業部門と、時間指定や納品条件の見直し協議

といったPDCAサイクルを回すことで、単発の施策で終わらず、継続的に再配達率6%目標に寄与する体制を築けます。

再配達削減は「フィジカルインターネット」への入口

最後に、少し長期的な視点にも触れておきます。経産省・国交省が2022年に策定した「フィジカルインターネット・ロードマップ」は、2040年頃を目標とした次世代共同物流構想です。その中では、

  • モーダルシフトの推進(今後10年程度で鉄道コンテナ・内航フェリー等の輸送量・分担率を倍増)
  • ダブル連結トラックや自動運転トラック、中継輸送機能の整備

といった取り組みが盛り込まれています。総合物流施策大綱(2026〜2030年度)でも、こうした革新的車両への対応やドライバー労働環境の改善が明記されました。

フィジカルインターネットの世界観は、

  • 荷主・業種を超えてトラックや倉庫を共同で使う
  • モーダルを跨いで最適な輸送モードに切り替える
  • デジタルで需要と供給をリアルタイムにマッチング

というものです。この前提に立てば、再配達のような「ムダな走行」は、極力ゼロに近づけるべき存在になります。そして、その前提条件として、

  • 荷待ち・荷役時間を削減し、トラックの稼働時間を最大限「走る時間」に振り向ける
  • 多言語を含むコミュニケーション基盤を整え、国内外のドライバーが混在しても効率的に回る現場を作る
  • 幹線・拠点でのデジタル化(受付・呼出・データ連携)を進める

ことが欠かせません。再配達率10.2%→6%という目標は、その意味で「ラストワンマイルの話」に留まらず、日本の物流全体をフィジカルインターネット時代に対応させていくための入口と捉えることができます。

テーマ 現状 目標・方向性
輸送力不足 対策なしで2024年度約14%、2030年度約34%不足の可能性 官民の取組で約14%分は克服、残りを構造改革で吸収
荷待ち・荷役時間 1運行あたり平均約3時間(荷待ち・荷役等) 1時間以上の短縮、荷待ち+荷役合計2時間以内(努力目標1時間)
再配達率 2024年10月時点で10.2% 政府目標6%程度までの半減
多言語対応 外国人ドライバー受入れ本格化、企業の約半数が言語不安 多言語ツールと実務内学習で日本語習得を後押し
デジタル化 紙受付・場内放送中心の現場がなお多数 受付・呼出のデジタル化とデータ活用で幹線〜宅配を最適化

再配達削減というテーマを、自社の倉庫や拠点のオペレーション見直しの「きっかけ」に変えられるかどうかが、今後数年の競争力を左右します。まずは、自社の荷待ち・荷役時間の実態把握と、幹線・宅配双方のスケジュールを俯瞰するところから、一歩を踏み出してみてください。